ガールズカーニバル 第二話

【小林】
聞いて下さいよー、小百合さん。この前咲蘭が昼寝していまして。
その隙にバナナの皮を通路に置いといたんです! そしたらさぁー!

【小百合】
……。

【小林】
マジで滑ったんですよー。めっちゃウケますよねー!

【小百合】
(この子はどうしてどーでもいいこと(特に倉見関係)を
 私に報告してくるんだろう)

【小林】
バナナの皮で滑る人間初めて見ましたよ。小百合さん見たことあります?

【小百合】
(もしかしてこの子、本当は倉見のこと嫌いなんじゃないかしら。
 好きと嫌いの区別がつかないアホな子なのかもしれない)

【小林】
……小百合さん?

【小百合】
(いや、ただ胸がデカいからセックスしたいのよ。
 倉見なんて胸がデカい以外に付き合うメリットがないじゃない。
 ただ胸がデカいから、この子は倉見が好きだと勘違いしているのね。
 本当、巨乳って罪深い存在だわ)

【小林】
あ、あのーどうしました?

【小百合】
参考までに聞いておくけれど、貴女は胸が大きい女と小さい女、どっちが好きかしら。

【小林】
そりゃ胸が大きい女の方がいいですよ! 大は小を兼ねると昔から――。

【小百合】
ふんっ!

【小林】
ひっ!? ちょ、な、なんで殴るんですかっ!?

【小百合】
無理に「大は小を兼ねる」なんて、難しい言葉使わなくていいわ。
もう一度その言葉を口に出したら、お腹の中にネズミを入れるわよ。

【小林】
す、すみません……。

【小百合】
とにかく貴女は無駄に脂肪がついた女が好きなのね。

【小林】
い、いや、そんな穿った見方をしなくても……。

【小百合】
何か言ったかしら?

【小林】
い、いえ! すみません!!

【小百合】
(やはり巨乳が好きなだけなのね。意味が分からないわ。
 あんな肉の塊、どこがいいのかしら)

【小林】
(小百合さん、自分の胸が小さいこと気にしてるのかな……)

【小百合】
これ、あげるわ。

【小林】
え、なんですか、この小瓶。お酒でも入ってるんです?

【小百合】
媚薬よ。

【小林】
えっ。

【小百合】
それを倉見に飲ませて、さっさと終わらせなさい。

【小林】
ちょ、ちょ、……えっ!? な!!

【小百合】
睡眠薬も欲しいならあげるわよ。

【小林】
そ、そういうことじゃなくて……ど、どうしてですか?

【小百合】
見ていてムカムカするのよ。本当に倉見のこと好きなの?

【小林】
へっ……?

【小林】
こ、ここ、こゆ、小百合さん。な、なな、何言うんですか!
そ、そそ、そんなこと聞かなくても〜……。

【小百合】
答えなさい。

【小林】
……。

【小林】
好きですよ。当たり前じゃないですか。

【小百合】
そっ。なら、付き合ったら何をしたいの?

【小林】
え、何を……?

【小百合】
付き合いたいと思うのだから、何かしたいことがあるのでしょう。
現状よりメリットがあるから、関係を深くしようと思っているのよね?

【小林】
え、ええ。まぁ……。
でも、そのー……笑わないで下さいね。

【小百合】
ええ。

【小林】
その……したいことは、強いてないんですよ。

【小百合】
……は?

【小林】
今までと同じでいいんです。
仕事して、ご飯食べて、寝て、テレビ見て、ゲームして。サボって。

【小林】
くさいこと言いますけど、その繰り返しの中に咲蘭がいてほしいんですよ。
アイツと同じ場所で、同じものを見てるのが私の幸せなんです。

【小林】
でも、それって一方的じゃないですか。
咲蘭も同じくらい。いや、それ以上に幸せになって欲しいんです。
そして、出来れば私が……おこがましいかもしれないけれど、幸せにしたいんです。

【小林】
だから、選ぶのは私じゃない。咲蘭です。
媚薬みたいな方法で、彼女の選択を奪ってはいけないと思うんですよ!

【小百合】
……。

【小百合】
(バナナの皮で転ばせて遊んでいる女のセリフだとは思えないわね)

【小林】
分かってくれました?

【小百合】
いいえ、何も。でも、強引は嫌だ、という事は分かったわ。

【小林】
ありがとうございます! でも、珍しいですねー。
小百合さんが人の恋路に口を出すなんて。

【小百合】
あなた達は見ていてイライラするから。

【小林】
あー、小百合さんも、いろいろ苦労してそうですもんね。

【小百合】
え?

【小林】
小百合さん、女癖の悪い人を好きになりそうな雰囲気あるんですよねー。
正面切って「好きだ!」って言われたら断れないタイプっぽい感じが。違います?

【小百合】
……。

【小林】
最初は嫌だったんだけど、段々気になり始めてー。でも、相手は冷めていてー。

【小百合】
…………。

【小林】
だけど、ズルズルと付き合っちゃって、結局――。

【小百合】
小林。

【小林】
ひっ!?

【小百合】
二度とその話はしないで。目に針を一本ずつ刺すわよ。

【小林】
すっ、すみませんでした!!

【小百合】
じゃ、スクワット3000回やりなさい。

【小林】
さっ!? そ、そんな……。

【小百合】
やりなさい。

【小林】
ひぃいっ!? わ、分かりました!

【小林】
いちぃー!! にぃー!! さぁーん!!

【小百合】
……。

【小林】
しぃー! ごぉー!!