【小林】
聞いて下さいよー、小百合さん。この前咲蘭が昼寝していまして。
その隙にバナナの皮を通路に置いといたんです! そしたらさぁー!
【小百合】
……。
【小林】
マジで滑ったんですよー。めっちゃウケますよねー!
【小百合】
(この子はどうしてどーでもいいこと(特に倉見関係)を
私に報告してくるんだろう)
【小林】
バナナの皮で滑る人間初めて見ましたよ。小百合さん見たことあります?
【小百合】
(もしかしてこの子、本当は倉見のこと嫌いなんじゃないかしら。
好きと嫌いの区別がつかないアホな子なのかもしれない)
【小林】
……小百合さん?
【小百合】
(いや、ただ胸がデカいからセックスしたいのよ。
倉見なんて胸がデカい以外に付き合うメリットがないじゃない。
ただ胸がデカいから、この子は倉見が好きだと勘違いしているのね。
本当、巨乳って罪深い存在だわ)
【小林】
あ、あのーどうしました?
【小百合】
参考までに聞いておくけれど、貴女は胸が大きい女と小さい女、どっちが好きかしら。
【小林】
そりゃ胸が大きい女の方がいいですよ! 大は小を兼ねると昔から――。
【小百合】
ふんっ!
【小林】
ひっ!? ちょ、な、なんで殴るんですかっ!?
【小百合】
無理に「大は小を兼ねる」なんて、難しい言葉使わなくていいわ。
もう一度その言葉を口に出したら、お腹の中にネズミを入れるわよ。
【小林】
す、すみません……。
【小百合】
とにかく貴女は無駄に脂肪がついた女が好きなのね。
【小林】
い、いや、そんな穿った見方をしなくても……。
【小百合】
何か言ったかしら?
【小林】
い、いえ! すみません!!
【小百合】
(やはり巨乳が好きなだけなのね。意味が分からないわ。
あんな肉の塊、どこがいいのかしら)
【小林】
(小百合さん、自分の胸が小さいこと気にしてるのかな……)
【小百合】
これ、あげるわ。
【小林】
え、なんですか、この小瓶。お酒でも入ってるんです?
【小百合】
媚薬よ。
【小林】
えっ。
【小百合】
それを倉見に飲ませて、さっさと終わらせなさい。
【小林】
ちょ、ちょ、……えっ!? な!!
【小百合】
睡眠薬も欲しいならあげるわよ。
【小林】
そ、そういうことじゃなくて……ど、どうしてですか?
【小百合】
見ていてムカムカするのよ。本当に倉見のこと好きなの?
【小林】
へっ……?
【小林】
こ、ここ、こゆ、小百合さん。な、なな、何言うんですか!
そ、そそ、そんなこと聞かなくても〜……。
【小百合】
答えなさい。
【小林】
……。
【小林】
好きですよ。当たり前じゃないですか。
【小百合】
そっ。なら、付き合ったら何をしたいの?
【小林】
え、何を……?
【小百合】
付き合いたいと思うのだから、何かしたいことがあるのでしょう。
現状よりメリットがあるから、関係を深くしようと思っているのよね?
【小林】
え、ええ。まぁ……。
でも、そのー……笑わないで下さいね。
【小百合】
ええ。
【小林】
その……したいことは、強いてないんですよ。
【小百合】
……は?
【小林】
今までと同じでいいんです。
仕事して、ご飯食べて、寝て、テレビ見て、ゲームして。サボって。
【小林】
くさいこと言いますけど、その繰り返しの中に咲蘭がいてほしいんですよ。
アイツと同じ場所で、同じものを見てるのが私の幸せなんです。
【小林】
でも、それって一方的じゃないですか。
咲蘭も同じくらい。いや、それ以上に幸せになって欲しいんです。
そして、出来れば私が……おこがましいかもしれないけれど、幸せにしたいんです。
【小林】
だから、選ぶのは私じゃない。咲蘭です。
媚薬みたいな方法で、彼女の選択を奪ってはいけないと思うんですよ!
【小百合】
……。
【小百合】
(バナナの皮で転ばせて遊んでいる女のセリフだとは思えないわね)
【小林】
分かってくれました?
【小百合】
いいえ、何も。でも、強引は嫌だ、という事は分かったわ。
【小林】
ありがとうございます! でも、珍しいですねー。
小百合さんが人の恋路に口を出すなんて。
【小百合】
あなた達は見ていてイライラするから。
【小林】
あー、小百合さんも、いろいろ苦労してそうですもんね。
【小百合】
え?
【小林】
小百合さん、女癖の悪い人を好きになりそうな雰囲気あるんですよねー。
正面切って「好きだ!」って言われたら断れないタイプっぽい感じが。違います?
【小百合】
……。
【小林】
最初は嫌だったんだけど、段々気になり始めてー。でも、相手は冷めていてー。
【小百合】
…………。
【小林】
だけど、ズルズルと付き合っちゃって、結局――。
【小百合】
小林。
【小林】
ひっ!?
【小百合】
二度とその話はしないで。目に針を一本ずつ刺すわよ。
【小林】
すっ、すみませんでした!!
【小百合】
じゃ、スクワット3000回やりなさい。
【小林】
さっ!? そ、そんな……。
【小百合】
やりなさい。
【小林】
ひぃいっ!? わ、分かりました!
【小林】
いちぃー!! にぃー!! さぁーん!!
【小百合】
……。
【小林】
しぃー! ごぉー!!